糖尿病患者に高頻度で合併する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、単なる「脂肪の蓄積」と軽視されがちですが、その中には、肝臓に炎症と線維化を引き起こし、将来的に「肝硬変」や「肝臓がん」といった重篤な病態へと進行する危険なタイプが含まれており、この進行形が「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」です。NAFLDは、肝臓に脂肪が溜まっているだけの状態ですが、NASHは、脂肪の蓄積に加えて、肝細胞の破壊と炎症が起こっている状態であり、この炎症が持続することで肝臓に線維組織が増加し、最終的に肝臓全体の機能が失われる「肝硬変」へと移行し、さらに肝臓がんのリスクも高まります。糖尿病患者がNASHを発症するリスクが高いのは、高血糖状態が持続することで生じる「酸化ストレス」や「炎症性サイトカインの増加」が、脂肪が蓄積した肝臓にさらなる炎症を引き起こすためであり、糖尿病とNASHは、互いの病態を悪化させ合う「悪循環」の関係にあります。このNASHへの進行を防ぐためには、糖尿病の治療と並行して、肝臓に溜まった脂肪を減らすことが不可欠であり、現在、NASHに対する確立された特効薬は存在しないため、「食事療法と運動療法による体重減少」が、最も効果的な治療法となります。体重の7%以上の減量によって肝機能の改善が、10%以上の減量によってNASHの改善や線維化の退縮が期待できると報告されており、糖尿病患者は、血糖コントロールのためだけでなく、肝臓の健康を守るためにも、体重の適正化を最優先の目標とすべきです。