インスリン注射は、血糖降下作用が最も強力であるため、その副作用として「低血糖」のリスクが他の治療薬よりも高く、インスリンを使用する患者は、この低血糖という生命に関わる危険な状態の兆候と「緊急対応」について、正確な知識を持っておくことが不可欠です。低血糖とは、血糖値が正常範囲(一般的に70mg/dL未満)を下回り、動悸、冷や汗、手の震え、強い空腹感、意識障害といった症状が現れる状態を指します。インスリン注射による低血糖は、注射量と食事量、運動量のバランスが崩れたり、注射時間が遅れたりした場合に起こりやすく、重症化すると意識を失い、命に関わる危険な状態となります。低血糖の兆候を自覚した場合の標準的な緊急対応手順は、「速やかに糖分(ブドウ糖や砂糖)を摂取させる」ことであり、意識がある患者にはブドウ糖やジュース、飴といった吸収の早い糖分を10~15g摂取させ、15分後に血糖値を再測定し、回復が見られない場合は再度糖分を摂取します。意識がない場合は、口の中に無理に食べ物を入れると窒息のリスクがあるため、家族や周囲の人が「グルカゴン注射」(医師からの事前指示が必要)を迅速に行うか、救急車を要請する必要があります。看護師は、インスリン注射を使用する患者に対して、低血糖の症状、対処法、そしてブドウ糖の携帯方法について、詳細かつ具体的な教育を繰り返し行い、患者自身が低血糖の兆候に気づき、迅速かつ適切に対処できる自己管理能力を高めることが、低血糖という危険から患者の命を守るための最も重要な役割となります。