糖尿病性動脈疾患(PAD)は、高血糖と脂質異常症によって足の血管(動脈)に動脈硬化が進行し、血管が狭くなったり詰まったりすることで、足の組織への血流が不足する病態であり、この血行障害は、糖尿病患者の足の切断に至る主要な原因の一つです。PADによる足の症状は、神経障害とは異なる性質を持ち、その進行に伴って痛みの種類と重症度が変化します。初期の症状としては、「足の冷感」や「皮膚の色・温度の変化」が挙げられ、足の血流不足によって足先が冷たくなり、皮膚が青白くなったり、逆に赤紫色に変色したりすることがあります。PADの典型的な症状の一つが、「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」であり、これは歩行時や運動時に足の筋肉への酸素供給が追いつかなくなることで、ふくらはぎや太ももに強い痛みやしびれが生じ、一時的に立ち止まって休むと痛みが緩和するという現象です。この間欠性跛行は、血行障害の進行を示す重要なサインとなります。PADがさらに重症化すると、足の組織が常に酸素不足の状態となるため、「安静時にも持続する強い痛み」(安静時疼痛)を感じるようになり、特に夜間に痛みが強くなる傾向があります。この痛みは、血行再建術などの治療をしなければ、鎮痛剤でもコントロールが難しくなります。最終的には、血流不足によって足の組織が壊死する「潰瘍や壊疽(えそ)」を引き起こし、足の切断に至るリスクが極めて高くなります。糖尿病患者は、足の冷感やしびれといった初期のサインを「冷え性」や「神経痛」と自己判断せずに、早期に専門医を受診し、血流の状態を評価する検査(ABI検査など)を受けることが、足の切断を防ぐための重要な予防策となります。PADの治療は、血糖・血圧・脂質のコントロールに加え、必要に応じて血管拡張薬による薬物療法や、バイパス手術、カテーテル治療といった血行再建術が選択されます。
糖尿病性動脈疾患足の冷えとしびれ、そして重度の痛み