糖尿病の発症において、膵臓の機能、特にインスリンを分泌するβ細胞の働きは極めて重要です。インスリンは、食事から摂取したブドウ糖を血液中から細胞に取り込むのを助け、エネルギーとして利用したり、貯蔵したりする唯一のホルモンです。このインスリンが十分に分泌されない、あるいは分泌されてもその作用が適切に働かないことが、糖尿病の直接的な原因となります。1型糖尿病の場合、自己免疫の異常により膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなります。これは不可逆的なプロセスであり、治療にはインスリンの注射が必須となります。一方、2型糖尿病では、初期にはインスリンの分泌は保たれていても、インスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)が生じ、それを補うために膵臓が過剰にインスリンを分泌するようになります。しかし、この状態が長く続くと、膵臓のβ細胞は疲弊し、徐々にインスリンの分泌能力が低下していきます。これは「インスリン分泌能の低下」と呼ばれ、2型糖尿病が進行する上で重要な要因となります。インスリン分泌能の低下は、遺伝的要因や、高血糖状態が膵臓に負担をかけること(糖毒性)、内臓脂肪から分泌される悪玉物質の影響などが複合的に絡み合って生じると考えられています。一度低下したインスリン分泌能を完全に回復させることは難しい場合が多いですが、適切な食事療法、運動療法、そして薬物療法によって、膵臓の負担を軽減し、残されたインスリン分泌能を温存することは可能です。特に、早期に生活習慣を改善し、血糖値を良好にコントロールすることで、膵臓の疲弊を遅らせることができます。膵臓の機能低下を防ぎ、インスリンの働きを最大限に活かすことが、糖尿病の治療と合併症予防の鍵となります。自身の膵臓の健康を守るためにも、日々の生活習慣に注意を払い、定期的な健康診断を受けることが大切です。
膵臓の機能低下とインスリン